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見た目より味を重視した「葉とらずりんご」とは?他のりんごより甘い理由と日本の農業を救う存在になり得る理由を解説

葉とらずりんごをご存知ですか?
葉とらずりんごとは、その名の通り収穫寸前まで葉を取らないことで糖度や密度をギュッと濃縮させたりんごです。栽培中に葉を取ることが当たり前とされてた、今までのりんごとは何が違うのでしょうか。

こちらの記事では、葉とらずりんごの特徴や甘い理由、今後の日本のりんご栽培を救う果物になり得る理由をフルーツの専門家が解説します。

葉とらずりんごの特徴

葉とらずりんごの特徴

葉とらずりんごは、名の通り葉を取らないまま栽培するりんごです。
りんごは、太陽の光を浴びることで赤く色づく果物。
葉に隠れたりんごは、葉っぱの影のかたちがそのまま残ったりと、色むらのあるりんごになります。

そのため、綺麗で真っ赤なりんごを栽培するため「葉摘み」すなわち、栽培中に葉を摘むのがりんご農園では一般的です。

では、なぜ葉とらずりんごは葉を取らないのでしょうか。
葉を残す理由は、葉摘を行ったりんごよりも糖度が高いから。
見た目は良くなくても、甘くてジューシーなりんごが栽培できることからあえて葉を摘まないのが葉とらずりんごです。

りんごは見た目が良くないと売れずらく、日本のスーパーの店頭には見た目の良い果物が優先して並べられることが多いのが現状です。
そのことが原因で、見た目を追求した真っ赤なりんごのために葉は摘まれてきました。
見た目を無視して甘さや美味しさを追求したりんご。
それが「葉とらずりんご」です。

葉とらずりんごが甘い理由

葉とらずりんごはなぜ、他のりんごより甘く美味しいのでしょうか。
理由を詳しく解説します。

葉を取らないから甘みが凝縮

葉とらずりんごが甘い理由

りんごを甘くするためには実はが重要です。
葉があることで光合成が行われ、甘みのもとがより多く作られます。
そしてその甘みのもとがりんごの実に行き渡ることで、甘さが凝縮されます。

逆に、葉を摘み取りすぎてしまうと充分に光合成ができずに、りんごの糖度が落ちてします。
これは農研機構でデータが発表されています。

収穫2ヶ月前に1果あたり20~30枚摘葉すると(葉果比60の樹が葉果比30~40になる場合)、糖度は下がる(図2)。しかし、摘葉後の葉果比を60に維持できれば、摘葉しない「葉とらず」リンゴと同程度の糖度の果実が得られる。

収穫2ヶ月前の摘葉は、「ふじ」のみつ入りに影響を及ぼさない(図3)。一方、収穫1ヶ月前の摘葉では、1果あたり30枚の摘葉でみつ入りが悪くなる。

引用:農研機構


リンゴの葉の光合成により作られるのはソルビトールという物質。
この物質は、成長段階において葉から軸を通ってリンゴの果実内に運ばれます。

そして、ソルビトールは果実の中でりんごの本来の甘味である「果糖」や「しょ糖」に変換されます。
葉摘みしたりんごと比較して葉とらずりんごが甘く美味しいのは、上記理由からです。

蜜がギュッと詰まってジューシー

りんごの美味しさの基準として「蜜入り」という言葉があります。
蜜は、甘み成分が完熟とともに溢れ出したもの。
そのため、蜜入りのりんごは自然の甘味変換成分ソルビトールがたっぷり含まれています。蜜の量が多いのは完熟の証です。

糖度の高いりんごは蜜入りが期待できるとされていますが、
葉とらずりんごは光合成によりソルビトールが豊富に含まれるため蜜入りのものが多くなっています。
ちなみに糖度は葉摘みしたりんごよりも葉とらずりんごの方が1度高いと言われています。

ぜひ、食べ比べてみてはいかがでしょうか。

農家の努力と自然の力が融合して完成した奇跡の果物

葉とらずりんごが甘い理由

実は、すべてのりんごが、葉を取らないから美味しいというわけではありません。
光合成のための土づくりや葉づくりが重要です。
いくら葉をとらないりんごでも、葉がしっかりと光合成をしなければ甘みのもとであるソルビトールは果実に行き渡りません。

そのため葉とらずりんごを栽培している農家では土壌や葉づくりにもこだわっています。
光合成ができる葉をつくるためには場所やタイミング、技術が重要になります。
葉とらずりんごが美味しい理由は農家の方々の努力の結果と自然の力のおかげです。

葉とらずりんごの栄養

葉とらずりんごの栄養

葉とらずりんごにはどのような栄養が含まれているでしょうか。
それぞれの栄養の効能とともに解説します。

カリウム

葉とらずりんごにはカリウムが多く含まれています。
体内にもっとも多く存在するミネラルであるカリウム。
カリウムは身体にはなくてはならない栄養で、ナトリウムと一緒に作用し水分保持や細胞の浸透力を維持するために働きます。

また不要なナトリウムを排出する働きも担っているため、血圧を下げたり、身体をむくみにくくする効果も。
カリウムが不足すると疲れやすくなったり、不整脈の原因にもなります。
りんごを食べることで、疲労回復や高血圧防止、夏バテ予防効果が期待できます。

リンゴ酸

リンゴ酸とは、りんごを酸っぱく感じる理由となる栄養素です。
リンゴ酸には、体内にあるクエン酸を助ける効果があります。
そのため、疲れの原因になる体内の乳酸を分解を促します。

また体内の炎症を抑える効果もあります。
解熱作用があったり、喉の痛みにも効果的。
風邪のときにはりんごを食べると良い」といわれる理由は、リンゴ酸の効能にあるのです。

ビタミンC

りんごにはビタミンCも多く含まれています。
ビタミンCは抗酸化作用があり、体内の活性酸素を抑制させ病気への抵抗力を強める効果があります。
そして抗酸化作用には美容に嬉しい効果も。

日光を浴びることで生じるメラミンを抑制するためシミ・シワができにくくなるため、美肌効果が期待できます。

ポリフェノール

葉とらずりんご

ポリフェノールにもビタミンCと同じ強い抗酸化作用があります。
抗酸化作用は、動脈硬化などの生活習慣病に作用します。
理由は体内の有害な活性酸素を無害化するからです。

またポリフェノールは、細胞を若々しく維持する力があるため、アンチエイジング効果も期待できます。
細胞が若々しいと肌のたるみ防止や、シミシワの予防に。
老化が気になり出したら、りんごでポリフェノールを補給するのもおすすめです。

食物繊維

りんごに含まれる食物繊維
食物繊維は腸内環境を整える効果があります。
そのため、便秘予防や腸内環境を整えるのに効果的です。

また血糖値の上昇を抑制するため、糖尿病などの生活習慣病を防ぐ効果も。
食物繊維は、多くの日本人に不足している栄養素のためりんごを食べることで、不足しがちな食物繊維を取り入れることができます。

葉とらずりんごを食べると期待できる効果

栄養素を紹介しましたが、葉とらずりんごにはどのような効果があるのでしょうか。
食べることで期待できる効果をご紹介します。

ダイエット効果

葉とらずりんごを食べると期待できる効果

葉とらずりんごはダイエットの時に取り入れるのにおすすめな果物です。
理由は、食物繊維が多く含まれているから。
食物繊維は腸内環境を整える効果があるため、便秘の方にはおすすめです。

さらに、葉とらずりんごはシャキシャキした食感で、少しの量でも満足感を得ることができます。
そのため、ダイエット中のおやつにも最適。
糖度が高いながらも、お菓子やケーキよりもカロリーが低いため、ダイエット中だけど甘いものが食べたい、というときにおすすめです。

生活習慣病の予防

葉とらずりんごには生活習慣病の予防効果も期待できます。
理由は、抗酸化作用のあるビタミンCやポリフェノールが多く含まれているから。
血圧上昇の予防や血糖の急な上昇を防ぐため、高血圧や糖尿病の予防に繋がります。

またりんごには、疲労効果や、風邪にも効果があるため、りんごが赤くなると医者が青くなるという言葉もあります。
りんごを1日に何個も食べているという東北の村では、高血圧の人がいないという事例もあるほど。
生活習慣病の予防だけではなく、健康を維持するために効果的なりんごは積極的に食生活に取り入れたい食材の1つです。

美容効果

葉とらずりんごを食べると期待できる効果

葉とらずりんごは美容にも効果があります。
シワやシミ、肌のたるみの原因となる活性酸素。
その活性酸素を抑えるための、抗酸化物質がビタミンCに豊富に含まれています。

またビタミンCには美肌の大敵であるメラニンを抑制したり、薄くする効果も。
新たなシミ・シワを発生しにくくさせるだけではなく、今できてしまっているシミやたるみにも効果を発揮します。

葉とらずりんごが美味しい時期

葉とらずりんごが美味しい時期は、通常のりんごと同様です。
品種にもよりますが、りんごは秋から冬が旬と言われています。
またりんごの旬は、産地によっても異なります。

長野の場合は11月から12月頃
青森の場合は1月から4月が美味しい時期とされています。

葉とらずりんごを食べる際の注意点

蜜入りが多いため早めに食べるのがおすすめ

葉とらずりんごを食べる際の注意点

糖度が高く、蜜入りしやすい葉とられりんごは新鮮なうちに食べるのがおすすめです。
理由は日が経つにつれてりんごの蜜が減ってしまうから。
りんごの蜜は、完熟の証です。

完熟から日が経ってしまうと、密が果実に吸収され徐々に少なくなっています。
葉とられりんごを購入する際は、新鮮なものを選び、早めに食べましょう。

美味しすぎて食べ過ぎ注意

りんごにはダイエットや生活習慣病の予防の効果がありますが、
糖度が高い葉とられりんごにはもちろん糖分も含まれています。
甘くてジューシーな葉とられりんごは美味しく食べる手が止まらず何個も食べてしまう、という声も。

しかし、甘いからこそ他のフルーツと比較してカロリーが高いのも事実です。
お菓子やケーキ、油ものに比べたら、圧倒的にカロリーは低いですが、食べ過ぎてしまうとカロリーももちろん増えていきます。

りんごは100グラムで約50キロカロリー。
そのため200グラムの中サイズを丸々2つ以上食べてしまうと、カロリー過多になってしまいます。
葉とらずりんごの食べ過ぎには注意しましょう。

葉とらずりんごはエコな果物?

葉とらずりんごはエコな果物?

糖度が高く、甘く美味しい葉とらずりんご
葉とらずりんごは、今後の農家を救う果物になり得るかもしれません。
理由は、日本の老齢化が進み、摘葉み作業自体が出来なくなっている農家が増えているからです。

見た目が良いものしか売れにくい現在、りんごも見た目を重視するために葉摘みを行って栽培されていました。
ですが労働力が減り、葉摘みができない農家のりんごは美味しくても見た目が悪いと売れ残ってしまうことも。
このような状況を救う鍵となるのは労働力を減らし、自然の力を活かし味を追求した「葉とらずりんご」です。

「見た目は悪いけど美味しいりんご」が認知されることで今まで売れ残っていたりんごも次第に購入されれば多くのりんご農家を救うことができるかもしれません。
また、りんごだけではなく国内のさまざまな農産物が、自由貿易や世界的な不景気を理由に危機的状況になっています。

円安による物価高騰で、労働者を雇うことが難しい農家や、高齢化で労働力が減っていく農家が増えているのが現状です。
自然農法である「葉とらずりんご」には、問題を解決する鍵が秘められています。
理由をご紹介していきましょう。

自然農法で栽培された葉とらずりんご

葉とらずりんごは自然農法を取り入れて栽培されています。
自然農法とは、一言で表すと「自然の仕組みを理解し、その仕組みを利用し栽培を行うこと」です。
自然農法を提唱した岡田茂吉はこのような言葉を残しています。

「生きている土の偉大な能力を発揮させれば、自然は豊かな恵みを与えてくれる」

引用:自然農法国際研究開発センター

葉とらずは、自然に生えてくる葉の力を活かしたりんごです。
葉っぱを摘まないことで、見た目よりも味にこだわったりんごを生み出しました。
確かに、見た目は悪いかもしれませんがそれが本来のりんごの姿です。

土や太陽の光など、自然の力をたっぷり活かした葉とらずりんごは労働力が減っていく未来に対応した果物です。

日本の放置農園解決の鍵になる

実はりんごの葉摘みはとても労力がいる作業です。
葉とらずりんごをつくるきっかけとなったのは、そもそも老齢化が進み、摘葉がそもそも出来なくなっていることが原因でした。
労働者の減少と、働いている人の高齢化で今後放置農園も増えていくことが懸念されています。

ですが、葉を取らないことで美味しいりんごになるなら労力をひとつ減らすことができ、労働力不足の解決にもつながります。
葉とらずりんごは持続可能、すなわちサスティナブル(SDGs)な世の中にふさわしいりんごなのです。

サスティナブルの目標12「つくる責任 つかう責任」に「2030年までに世界全体1人あたりの食品廃棄を半減させる」という項目があります。
見た目が悪い農作物は、売れないことを理由に廃棄されることもありました。

見た目を気にするのではなく、労力を減らした自然農法の「葉とらずりんご」
認知されることで食品ロスの解消に繋がる可能性を秘めています。
日本の農業の未来、そして持続可能な未来のために。

葉とらずりんごは見た目ではなく味を追求した自然農法の農作物が当たり前になる未来への鍵になり得るかもしれません。

果物売り場の変革を目指して

果物売り場の変革を目指す葉とらずりんご

現在、スーパーの果物売り場には綺麗で見た目の良い果物が並んでいます。
華やかな果物売り場は一目を引き魅力的ですが、今後は見た目ではなく美味しさを追求した食品売り場が増えていくことが農家の未来につながるのではないでしょうか。

無印良品を展開する株式会社良品計画は2021年12月より削減できる作業を省いた、見た目にキズやシミ、色ムラがあってもおいしさは変わらない「不揃いりんご」の販売を開始しました。
参考URL:一般の規格から外れてしまう「不揃いりんご」を今年も発売

こちらも農業人口の減少の問題に向き合い開始された取り組みです。
「不揃いりんご」のように「葉とらずりんご」の認知度が高まり、スーパーに訪れる人たちからの需要が高まれば、労働力が少なくても栽培が可能な果物が多く並ぶ日が来るのではないでしょうか。

日興フーズの葉とらずりんご「天使の葉ね」

日興フーズの葉とらずりんご「天使の葉ね」

日興フーズの葉とらずりんご「天使の葉ね」
日本のりんごを守るために「見た目より味」を追求した自然農法の葉とらずりんごです。
「天使の葉ね」の名前の由来は、葉とらずの葉からきています。

今までの栽培方法では邪魔者とされていた葉ですが、むしろりんごにとっては栄養をたくさんくれる「天使」的存在です。
その葉にちなんで「天使の葉ね」と名付けました。
見た目も良く、味も良い葉とらずりんごを販売するため、労力を懸けてとても美味しいりんごを栽培する農家さんも多くあります。

ですが日興フーズが目指すのは、葉とらずを特別な栽培方法とせずに葉とらずりんごを拡めていくところにあります。
見た目が悪いが美味しい、農家を救う「天使の葉ね」。
今後は、甘く爽やかな葉とられりんごの特徴を活かした、飲料やドライフルーツ、お菓子を展開予定です。

詳しくは、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせはこちらから

「見た目で選ばない」の先駆けとなる「葉とらずりんご」

葉とらずりんごの特徴や栄養、効果、日本の農業の問題を解決する果物と呼ばれる理由をご紹介しました。
見た目ではなく味を追求した葉とられりんご。

認知されていくことで、この先のフルーツのあり方や、日本の宝である農業を維持していくための問題解決のきっかけになるかもしれません。
他のりんごにはない、葉とらずりんごの甘みとジューシーな蜜をぜひ一度体験されてみてはいかがでしょうか。

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